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入手しやすい寸法とその理由

ヒノキは成長の遅さがネック

木材の入手時における寸法と価格の関係は前述のとおりです。ただし、たとえ価格が同じ材でもすべての材が等しく入手できるとは限りません。木材には「入手しやすい寸法」があります。樹種によって成長のスピードが異なるため、丸太の蓄積量に差があるのです。
DATA-1は、スギとヒノキの成長を樹齢50年と80年で比べたものです(数字は目安)。スギは約50年で丸太径300㎜に達しますが、ヒノキは290㎜径に達するまで80年を要します。この違いは、同じ120×240㎜の梁材を確保したいとき、スギなら蓄積量の多い50年生(丸太径300㎜)で十分なのに対し、ヒノキは極端に蓄積量の少ない80年生以上のものから探す必要に迫られるということです。この違いは当然、価格に反映されます。
上:建築用木材に加工できる木は、丸太の状態で直径 150㎜以上に成長しているのが条件。樹齢でいえば 40 年以上。やまなし県産材の 9 割以上は樹齢 40 年以上なので、ほとんどの木が建築用材に加工可能といえます。 下:木の直径が 300㎜程度ならスギとヒノキの成長差は 30 年ほどですが、それ以上太くなるともっと差が広がります。
出典:農林水産省木材統計調査

木取りが分かればコストも見える

築用木材として最終的に必要な寸法を確保するには、乾燥収縮やねじれの影響を考慮してスギとヒノキは15㎜、アカマツは30㎜ほど大きめに製材するのが通例です。ヒノキの120㎜角の柱がほしければ、135㎜角で製材して乾燥後に120㎜角に仕上げます。木取りの代表的な方法はDATA-2のとおりですが、これを見れば「心去り材」や「四方柾」といったこだわりの材がどうして高価で貴重なものなのかがよく分かります。

高い? 安い? やまなし県産材の価格

やまなしのスギやヒノキの丸太価格(中丸太=直径14~30㎝)は、全国平均より安いといえます(グラフ参照)。外材の輸入自由化のあおりを受け、国産の丸太価格は昭和50年代をピークに下降の一途をたどり、いまやピーク時の1/3程度の価格で取引されるようになっています。ベイマツやベイツガの丸太(直径30㎝以上のもの)と比較しても、スギやヒノキの丸太(中丸太=直径14~30㎝)のほうが安いくらいです。価格が安いのは利用者にとってはありがたいことですが、必ずしも良いことだけではありません。森林所有者にとっては、山を維持・管理していくための収益が上がらなくなります。日本の山全体のことを考えれば、国産材の低価格化は決して手放しでは喜べない現象なのです。