1. HOME
  2. 特集
  3. 木材価格と寸法の関係

SPECIAL

特集

木材価格と寸法の関係

木材価格と寸法の関係

「スギの柱 1 本、○○円!」。こんなふうに金額が分かりやすく提示できればよいのですが、木材は鮮魚や野菜と同じように季節や年毎に単価が変わる「なまもの」です。常に同じ価格ではありません。では、木材の価格を自分で把握するのは不可能なのでしょうか ……。はっきり「○○円です」とは言い切れないものの、木材には寸法によって明らかにコストが変わる境界があります。これさえ押さえておけば、価格の面で大きな失敗をすることはないでしょう。無駄なコストアップを抑制できる、“経済的な設計”に必要な知識をお教えします。

木材の単価は「材積の立米単価」で比較します。ある材の価格が知りたければ、立米単価に材積を掛けて割り出せばよいのです。グラフはやまなし県産材(構造材)の立米単価の参考例です。一番下の寸法「120 × 120 × 3,000㎜」を基準に、寸法の変化に応じて単価が基準値から何 % 上がるかを示しました。これを見ると一目瞭然ですが、材せいが 210㎜以下なら 3 mでも 4 mでも立米単価は同じ(材積が変わるので材 1 本当たりの価格は上がります)。あとは見てのとおりです。経済的な設計をするには、材せい 210㎜以下、長さ 4 mまでで構造材を組み合わせればよいと分かります。

ヒノキの単価も、スギと同様の傾向が見られます。スギの「経済寸法」は 210㎜以下でしたが、ヒノキは 240㎜以下までなら単価が変わりません(長さ 4 mまで)。注目すべきは、材せいが 330㎜を超えると 5 m以上の材は極端に高価になるという点です。これは、やまなしのヒノキの多くが、太く長い材が取れるほど十分に成長していないのが理由です(37 頁参照)。

基準寸法で比べると、アカマツはスギの 1.33 倍の価格です。しかし、ヒノキ(1.42 倍)よりは安い。ヒノキと同様、材せいが 240㎜以下なら単価は変わりません(長さ 4 mまで)。ただし、アカマツの丸太を小断面に落とすと材の性質上ねじれや狂いが生じやすく、輪生節(節の集中により強度が落ちる)も出やすくなるため、現実には 210㎜以上の断面でタイコ梁か丸太梁として使うのがおすすめです。
注:カラマツの立米単価表はありません(25 頁参照)
樹種ごとの立米単価倍率は山梨県木造住宅協会調べ(2015 年 10 月現在)

ではここで、設計・発注前段階のおおよその価格を調べてみましょう。前出の「立米単価倍率」のグラフと「材積倍率」のグラフを使います。たとえば、やまなし県産材のヒノキの価格を知りたい場合、必要な寸法が 120 × 300 × 4,000㎜であれば以下の手順で価格が割り出せます。

1.まず、知り合いの材木店などに問い合わせて、やまなし県産材「スギ」の4寸角柱(基準寸法:120 × 120 × 3,000㎜)1本の最新価格を入手する → 結果、3,500 円だった
2.グラフ「ヒノキKD材の立米単価倍率(120㎜幅)」で、[300 × 4,000㎜]の部分を見る → 1.70 倍だった
3.グラフ「材積倍率(基準:120 × 120 × 3,000㎜)」で、[300 × 3,000㎜]の部分を見る → 3.33 倍だった
4.1 ~ 3 の数字を公式に当てはめると、約 19,800 円と割り出せる

木材の価格は、取扱い店・時期・年ごとに変化しますが、樹種どうしの価格差、寸法ごとの立米単価はあまり変わりません。したがって、最新の基準単価(スギの 120 × 120 × 3,000㎜)さえ分かれば、これらのグラフからやまなし県産材のおおよその価格が割り出せるのです。